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「Zenesis」

絵:眠木める
​動画:皇黄リリエ
歌:
風街ピリカ
皇黄リリエ
小夜セレネ
憶月フィーカ
夢紬そいね
烏野飴子
いなまつり
禍味やみ
音ノ葉コンパス
木部川こぢき
アリス≒ドグラ・マグラ
りくり
ノア・ポラリス
夜世生 宵
古椿姫メル
歌踊マガル
 

『終末リレーOP配信』

​【OP配信】

あなたは目の前の端末を見ていた。

何も特別ではない日常。いつもの風景。

そこにふと舞い込んでくる非日常。

端末の画面にノイズが走り、謎の電波を受信した。

 

#???

「あー、あー。聞こえているだろうか。」

 

やがてノイズは減っていき、音声と画面の受信が安定する。

少し間を空けて、画面内の声に返事をする。

 

#???

「あぁ、よかった。聞こえているようだね。

上手くいってよかった……

はじめまして。私のことはひとまず”博士”と呼んでほしい。」

 

博士とやらは画面外にいるのだろうか。画面内には見当たらない。

周りはよく見えないが……PCや、よく分からない複雑な機械類がたくさんあるように見える。

研究施設といった感じの場所だ。

 

#博士

「まず、いきなりコンタクトを取って、驚かせてしまっただろう。すまない。

少し、私の話を聞いてはくれないだろうか?」

 

話している声の様子から、切実な雰囲気を受ける。

よって、あなたは肯定する。

 

#博士

「ありがとう……まず、こちらの世界について説明しよう。

私がいるこの世界は、100年前に”終末”を迎えた。

原因については諸説あるが、確かに言えることは、その”終末”でほとんどの人類が死に絶えたということだ。

星は資源も乏しい死の星となってしまい、残り僅かな人類は希望を失って生きている。

私は数少ない人類の生き残りの子孫なんだ。」

 

思った以上に深刻な話だ。世界が終末を迎えた?人類がほとんど滅亡した?

不謹慎な考えだが、もしそれが自分の世界での出来事だったら…と思うとぞっとした。

実際にその状況下にいる博士の心中は計り知れないだろう。

 

……そんな”終末”を迎えた世界からコンタクトを取ってきた、博士の目的は何だろう?あなたは考えた。

……そこからの話は、突拍子もなく、だが無視できない話だった。

あなたは聞き入った。

 

#博士

「私の目的は、こちらの世界の”終末”の歴史を変えて、人類を復活させることだ。

……荒唐無稽な話に思えるだろう。だが計画がある。

そのために、君たちの力が必要なんだ。

私たちのこの世界には”願いの力”というものが存在する。

君たちの世界にも、宇宙を満たす未知のエネルギー……ダークエネルギーというものがあるらしいな。

ちょうどそれの正体にあたるものが、こちらの世界では”願いの力”なんだ。

“願いの力”はどんな人も持っている。

やりたいこと、楽しいこと、好きなこと……それらを願う時に人々の脳波から発生するエネルギー、それが”願いの力”だ。

だがそれは普段、あまりにも弱い力なので空間上に拡散されていき、何の意味も成さない。

私はこの”願いの力”を集める技術を開発した。

微弱な願いの力も、たくさん集めれば、それは立派なエネルギーとして利用可能になる。

物を動かしたり、化学反応を促したり……もっと膨大なエネルギーなら、新たなものを生み出すなんてこともできるだろう。

そこで、大量の”願いの力”を集めて、そのエネルギーを使って新しい歴史の枝を作り、”終末”の歴史を回避する。

それが私の目的だ。

……だが、歴史を分岐させるためには、途方もないほどのエネルギーが必要だ。

それこそ、もう一つの宇宙を作るようなことなのだから。

こちらの世界には人類は少なく、”願いの力”をいくら集めても必要な量にはとても足りない。

そこで……君たちの力を貸してほしいんだ。

君たちに、こちらの世界のために願ってほしいんだ。

 

……いや、君たちの言いたいことはわかる。

いきなりそんなことを言われても……と感じていることだろう。

そもそも、“願いの力”を生み出すためには、本心から願わなければいけない。

どこの誰とも知らない者のために本気で願えといきなり言われても、難しいだろう。

そこで君たちには、とある映像を見てほしいんだ。

それは「この星の終末の瞬間、最期の時を歌って過ごした者」の映像だ。

“歌”には願いを増幅させる力がある。

君たちも、そんな力を音楽から感じ取ったことはないだろうか。

メロディー、音色、歌詞……普通に話すよりも、何倍もの密度の想いが詰まっており、それが人々に大きな共感を産む。

この要素が、大量のエネルギーを生み出すことに不可欠なんだ。

だから、歌を聴いてもらうことで、大きな願いの力を産んでもらいたい。

私はそちらの世界のことを事前に調査する中で「歌枠リレー」という文化を知った。それを利用させてもらおうと思う。

これから君たちには、様々な者が歌い紡ぐ「歌枠リレー」を見届け、彼ら彼女らの明日を願い、世界を救う旅に出てほしいんだ。

 

……お願い、できないだろうか。

いや、我々のこの滅びゆく世界には選択肢なんてない。

情けないことだが、お願いするしかないんだ。

どうか、見届けてくれ。」

#

あなたは、ここまでの話を噛みしめつつ、静かに、だがしっかりと頷いた。

 

#博士

「ありがとう。心より、感謝を申し上げる。

……それでは、これからその「歌枠リレー」を見届ける前に、いくつか話しておきたいことがある。

“願いの力”をしっかりと集めるために、大事なことだ。よく聞いてくれ。

まず、同じく歌枠リレーの文化では、楽曲の権利関係のトラブル防止のために「スパチャ」をオフにしていると聞いた。

そのため、出演者へ有償の応援をしたい場合は「メンバーギフト」で応援をお願いしたい。

 

また、歌枠リレーの文化では、配信をコメントや弾幕で盛り上げるそうだな。

盛り上がっている配信には、人が集まる。

人が集まればその分、”願いの力”も溜まりやすくなる。

ぜひ、コメントや弾幕で盛り上げてほしい。

 

それから、ハッシュタグを使って感想を呟くのも有効だ。

それを見た新しい人が集まってくれるかもしれない。

それに、感想を文章化するというのは、一人一人の”願いの力”を高めることにも繋がる。

そして、歌う者達……「出演者」の再生リストがそれぞれの配信の概要欄に貼ってある。

こちらを使ってもらえたら、次の枠へ自動的に移動するから、活用してくれ。

再生リストを使わなくても、概要欄には次の出演者のURLが貼っているから、それを利用してもらっても大丈夫だ。

もう一つ。この後、出演者の者を全員紹介しようと思う。

それもぜひ、コメントで弾幕や名前を呼ぶことで、盛り上げてほしい。

 

お願いごとは以上だ。

ふふ、君たちよりも、先に”願い”を伝えることになってしまったな。

準備は、いいだろうか?

 

……さて、私はそちらの世界へと交信を飛ばしたが、人類のうち、君たちと繋がったのは偶然だ。

だがあえて、私はこれを”運命”と呼ぼう。

これから私達は共に、終末の過去を見届ける旅に出る。

願いの力を無理に出せとは言わない。

この旅が終わっても、共感ができないということであれば、それもまた運命として受け入れよう。

だが、なるべく強い想いを、訴えかける力を持った者たちを選んだつもりだ。

 

……では、そろそろ行こうか。

この旅を、君たちの持つ文化である「歌枠リレー」になぞらえて。

終末を迎える世界を次に繋げたいという願いを込めて、こう呼ぶことにしよう。

 

“終末世界リレー”

 

開幕。

【ED配信】

……ある時は、戦争で。

 

#???

「……やめてくれ。」

 

ある時は、環境破壊で。

 

#???

「……どうして、何度やり直してもこうなるんだ。」

 

ある時は、自然災害で。

 

#???

「……もう嫌だ。もう、終末は見たくない……」

 

人類が、世界が、星が、終末を迎える所を何度見てきたか分からない。

何度終わっても、何度やり直しても、人類は終末を迎えてしまった……

 

#博士

「……あぁ、すまない。少し昔の思い出に浸っていてね。

さて、ここが”終末世界リレー”の終点だ。お疲れさま。

どうだろうか。ここまでの出演者を見てきて、私たちの明日を願いたいという気持ちは、芽生えてくれただろうか。

……君たちの中に、”願いの力”は生まれただろうか。」

 

あなたは頷く。

 

#博士

「そうか、よかった……

最後に、少し話をしよう。

この世界の真相について。君たちには知っておいてほしいんだ。

ここまで共に旅をしてきた君たちにはね。

 

……まず、私の正体について話しておこう。

私は宇宙だ。

この世界の宇宙そのものが、それ自身の願いの力によって具現化した、宇宙の意志。それが私。

宇宙が、世界を救いたいと、そのために君たちと話したいと願い、その願いの力が私を形作った。

そうして生まれた存在が、私なのだ。

私はこの世界の、この星の行く末を、ずっと見守ってきた。

 

君たちは、これまで見てきた様々な終末について、どう思っただろうか?

私は最初、「この星の終末の瞬間、最期の時を歌って過ごした者」の映像を見てほしいと言った。

だが、それにしては、時代も世界観も様々であるように感じなかっただろうか?

まるで全てが別の星、別の世界での出来事であるかのように。

だが出演者が体験した終末は全て、紛れもなく同じ星で起こった終末なんだ。

なぜなら……終末はこの星の長い歴史上で、一度だけではなく何度も起きているからだ。

 

終末が訪れるスパンは数億年~数十億年。

人類文明がある段階に達すると必ず、世界の崩壊を願う人の数が一定数を越える。

これは実際、そちらの世界で行われたマウスの楽園実験というものにより、実証されていることだ。

どんな理想郷ができて、社会が幸福に満ち溢れても、幸福度にはピークがあり、それを越えると社会は不幸へと堕ちていく。

 

この世界は、願いの力が存在する世界。

人類の願いが一定数多く、強くなると、それらは世界に作用する。

世界は人々の認識によって、その姿を確定させる。

「この世界が終わってほしい」という、人々の強い願い・ビジョンは、世界の姿を「終末世界」へと確定させてしまうのだ。

 

終末の起こり方はその時に応じて様々。

隕石が落ちることもあるし、未知のウイルスが広がることもあるし、魔法使いが滅びの魔法を唱えることもある。

 

とにかく、終末が起こると、人類はほとんどが死滅し、建築物などの文明もほとんど無くなる。

ただし、毎回辛うじて、文明の再興が可能な程度の人類の個体数と自然環境は残る。

もしかしたらそれは、宇宙そのものである私自身の「またやり直してほしい」という願いが影響したのかもしれない。

 

人類は終末の度に再興してきた。

自らの星の環境破壊を止め、自然との共存を目指した。

太陽が老いて膨張した際は、そのライフサイクルを遅くする技術を開発し、延命した。

だが、それももう限界が来ている。

かつて無限に見えた宇宙のエネルギーも、ついに底を尽きてきた。

宇宙のエントロピーは増大し続け、圧縮されていたエネルギーは拡散し続け、私…宇宙は熱を失いつつあるんだ。

つまり、宇宙全体の寿命が近いということだ。

 

この世界はもう、人類を宇宙ごと終わらせるかどうかの選択の時を迎えている。

この先も同じように終末と再興を繰り返しても、未来は先細りしていくばかりだ。

 

私は、この終末世界を、自分自身を終わらせて、次に繋げることを決意した。

残ったエネルギーと、君たちの願いを極限まで収束させ、それを使ってビッグバンを起こし、新たな宇宙を生み出そうとした。

だから、君達とコンタクトを取った。

 

……これが、この世界の真相だよ。

要するに、私はもう命を失いかけているということだ。

だが恐れてはいない。それよりも今は、希望で満たされているから。

死ぬ前に、君たちと出逢えて、よかった。

 

さて、最後にもう1人出演者がいる。

その者の名前は……

 

風街ピリカ。そう、僕だ。

こんばんは。ここまで博士の物語を聴いてくれてありがとう。

僕がいるここは、空想図書館。

物語が、別世界が本として具現化する場所。

博士の願いは、僕の元に物語として届いていたんだ。

だから、僕がそれを君たちに朗読することで届けていたというわけ。

 

さて、博士の願いを叶えるために、最後の仕上げといこうか。

 

僕は、1つの歌を作った。

ここまでの出演者たちの願いを紡ぎ合わせた歌。

いわば、この終末世界リレーの主題歌だ。

曲の名前はZenesis。

アルファベットの終わりであるZと、Genesis(創世)を合わせた言葉。

一つの世界の終わりを、新たな創世へと繋ぎたいという、願いを込めて。

では、聴いてほしい。

(Zenesis )

#博士

さて、これで私たちから届ける”歌”は全てだ。

そして……ありがとう。どうやら、君たちの”願いの力”は十分だったようだ。

新しい宇宙が生まれる、鼓動を感じる。

 

……この計画の末に生まれる宇宙は、きっとまた、熱を含んだ、暖かい宇宙として生まれてくれるだろう。

なぜなら、今の君たちの願いは、暖かい。

 

……あぁ、意識が遠くなってきた。

そろそろ、私の寿命も尽きる頃らしい。

 

……今こそ、この終末世界から、新しい宇宙へとスポットライトを移そう。

歌で繋いだこの”願い”を、新たな世界へと託そう。

 

……そうだな。

観測者である君たちと、私だけが知るこの物語は、やはりこう呼ぶのが相応しいだろう。

 

新たな世界へとバトンを繋ぐ物語。

「終末世界リレー」と。

 

──138億年後

 

「あはは!ほら!こっちこっち!」

「待ってよー!そんなに走らないでよー!」

「えー、なんか今日、楽しいんだもんー!」

「なんでそんなに楽しそうなんだよー?」

「んー、別に何かあったわけじゃないんだけど…ただ…

 

陽が、あったかいなって。」

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